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愛馬の食事・カウンセリングルーム

Q48 馬への給水について

Q48 質問者:乗馬愛好家

乗用馬を1頭所有しており乗馬クラブに預託しています。馬への給水について2点教えてください。

質問1

<毎日(体調が悪くなくても)塩と重曹を与えた方が良い。また、水を飲みたいだけ飲ませると尿がどんどん出て血中濃度が薄くなってしまうから、一定の濃度を保つために飲み水の量を制限した方が良い。>という考え方があると聞きました。
しかし、ナトリウムを給与した上で給水を制限したら水分不足になって良くないのではないかと思います。水は自由に飲ませた方が良いのではないでしょうか?

 

質問2

給水制限をした方が良い場合があるとしたら、どのようなときでしょうか?

 

Answer

質問1について

<どのようなときでも新鮮で清潔な水を常に飲めるようにしておく>ことは、<飼料には牧草のような繊維質飼料を確保する>のと同じくらい、馬の飼養管理における基本的な大原則です。

馬の体内には体重の65%もの水が存在し、水分はさまざまな重要な役割を果たしていることから、自由に飲水させることは健康維持の上で非常に重要です。併せて、塩もナトリウム源として毎日給与することも重要です。(体内ではナトリウムとカリウムのバランスを適切にすることが重要ですが、牧草などにはナトリウムが少なくカリウムが豊富です。ですから通常の飼料給与ではナトリウムが不足するため、塩の補給が必要となります。)

塩の給与量は、体重500㎏程度の成馬であれば、1日あたり30-50グラム、強い運動が負荷され発汗量が多い(ナトリウムの損失が多い)夏季であれば1日あたり100グラム程度を与えるのが適当と考えられます。(配合飼料の中にも食塩が含有されていることが多いので、その分は差し引く必要があります。)

ご指摘のとおり、塩は馬の飲水意欲を刺激するため、塩は与えるが飲水は制限するという管理方法は推奨できません。 また、重曹(重炭酸ナトリウム)は体液のアルカリ化を進行させて、呼吸循環系などに悪影響を与える可能性があることから給与には注意が必要です。 したがって重曹の給与も推奨しかねます。

 

質問2について

上述のとおり、通常の管理下で給水制限が必要な場合はありません。
<激しい運動直後の馬に水を与えると疝痛になるので、給水は馬体の体温が下がってからにすべき>ということも言われたことがあります。 しかし近年は<冷水でなければむしろ給水は推奨される> との意見が強いようです。