飼育管理のプロが答える

愛馬の食事・カウンセリングルーム

Q44 レース出走前 減量のためのカイバ

Q44 質問者:競馬厩舎関係者

私の担当馬でレースに向けて体重を絞りたい馬がいるのですが、なかなか体重が減らずカイバを工夫しようと思っています。 今、与えているカイバはエンバク、配合飼料、高タンパクの補助飼料、大豆粕、チモシーのみとチモシーとルーサンの混ざった切り草、あとは塩などとサプリメントです。チモシーとルーサンの投げ草も与えています。私の同僚は投げ草を切るもしくは減らすのが良いと言っていたのですが、私は草食動物で草を抜くのはどうなのかと思っています。
今のカイバの内容でどのカイバを抜く、もしくは減らすのが良いのかアドバイスをお願いします。

Answer

競走に向けた体重調整方法でもっとも一般的な方法は牧草給与量の減量です。これによって大腸の内容物の減少を図ることにより、体重減効果を得るものです。しかし、ご指摘のとおり、草食動物である馬にとって牧草に含まれる繊維は、馬の健康に欠くことのできない栄養素であることから極端な減量は推奨できません。摂取された繊維は馬の大腸内で水分を保持する働きがあり、極端に牧草摂取量が低下すると馬体に必要な水分を保持することができなくなり、下痢を発症させたりパフォーマンスを低下させる可能性があります。

これまでに報告されている科学的な知見では、競走前の3-4日間(追い切り調教後)における1日あたりの牧草摂取量を体重の1%(体重500㎏の馬であれば5㎏)程度に制限することで体重を2%(体重500㎏の馬であれば10㎏)程度減らすことが可能とされています。この牧草給与量1%という値も、馬の健康を最低限保ちつつ大腸の内容物(繊維+水分)を少なくすることによって体重を低下を実現させる言わばギリギリの値と考えられます。このような牧草の制限給与時に、敷料である寝藁を食べる馬もいるので、口かごを装着する、あるいは敷料をウッドシェービングに変更するなどの対策も必要となることがあります。

現在給与されている飼料のうち、投げ草として与えられているチモシーとルーサンを等量ずつ減らすことで1日の牧草給与量が体重の1%程度とすることをまずはお試しください。なお、これによって投げ草給与量がゼロになってしまうのは胃潰瘍防止の観点からも避ける必要があり、少量ずつ頻繁に与えることが原則になります。競走終了後はまた通常の給与量にもどしてください。

さて、ここで心配なのは、現状での乾草給与量がすでに体重の1%程度で推移している、という状況になっていないかどうか、です。 もしそうであれば、普段から牧草給与量が少ない状態で管理されていることになり、こうした状況では上記手法も効果は発揮されません。是非牧草給与量を確認いただき、もし現状がそうであれば、穀類や配合飼料の給与過剰による過体重が背景にあり、それを見直す必要があります。 通常の牧草(乾草)給与量は切り草も含め、体重の1.%程度ですので、ご参考ください。