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Q43 馬のコロナウイルス感染症について

Q43 質問者:乗馬愛好家

馬にもコロナウイルス感染症があると聞きましたが、ヒトと同様の症状でしょうか。また栄養面で考えられる予防方法などあるのでしょうか?

Answer

馬のコロナ感染症は馬コロナウイルスによって感染することが1975年に初めて報告されました。主たる臨床症状はヒトで認められる呼吸器症状とは異なり、馬では炎症を含む消化管の異常が認められることがあり、消化器疾患として認識されています。

しかし、感染しても多くは無症状で推移し、症状が現れる場合は、食欲不振や元気消失、発熱が多く、軟便や疝痛も症状を認めた馬の20%程度に認められるものの、いずれも抗炎症薬等による対症療法で改善するとのことです。 なお、有症状馬の3%程度に脳症を認めることがあり、これはダメージを受けた腸で腸内微生物叢が混乱することによって過剰に発生したアンモニアが血流を経て脳に至る合併症(高アンモニア血症)によるものとされています。

 

日本では帯広競馬場に所属する重種競走馬の集団に3回流行(2004~2012年)した経緯がありますが、感染馬の多くは食欲不振や下痢を中心とした軽度の症状であったこと、届出伝染病ではないことから開催の中止には至りませんでした。 馬コロナウイルスは感染馬の糞便に排出され、それが感染源になるとされています。幸い国内においてサラブレッドでの感染は確認されていませんが、注意は必要と考えられます。

 

ヒト同様、栄養面で確立された感染予防策はありませんが、感染した際の重症化に備えて日常の飼養管理において腸内環境を整えておくことは重要との考え方があります。それによると、牧草など繊維質飼料を一定量確保することに加え、腸内微生物を安定化させるプレバイオティクスであるイースト菌由来物質やマンノオリゴ糖、フルクトオリゴ糖などはその効果があるとのことです。

 

なお、現時点で、ヒトから新型コロナウイルスが馬に感染するかどうかを示す科学的根拠はありません。